咬合誘導 症例

ディスクレパンシーの予測より非抜歯矯正への
咬合誘導症例

2011年2月20日 第14回千葉県歯科医学大会ポスター発表

(抄録)

混合歯列期(ヘルマンのデンタルステージⅢA期)において、上下顎4前歯の幅径より小野の回帰方程式を用いて側方歯群のディスクレパンシーを予測する。下顎は、ウィルソンの3Dリンガルアーチ?を用い、下顎大臼歯の近心及び舌側傾斜の修正、歯列弓拡大等を行う。上顎は3Dクワッドヘリックス®、サービカルヘッドギアを用い、大臼歯捻転の修正や遠心移動、歯列弓拡大等を行う。

それにより萌出スペースを獲得し、非抜歯症例として咬合誘導を行った。その後、マルチブラケット装置により各歯の平行性と鼓形空隙を考慮し、生理的な歯列と咬合を確立した症例を提示した。

当医院では、ウィルソンの垂直着脱の固定装置を用い、各装置の作用を効果的に引き出しながら積極的に咬合誘導を行うことにより、混合歯列期のほとんどの症例において非抜歯にて治療を行えるようになった。


2011/2/20 第14回千葉県歯科医学大会に出席して、ポスター発表

症例1

アングルII級2類症例(非抜歯)
初診時年齢:8才3ヵ月 男性
over jet 9㎜ over bite 5㎜
臼歯関係:右側 アングルII級、左側 アングルII級

小野の回帰方程式 近遠心幅径の総和
X'=26.8
3・4・5番幅径総和の予測値
Y=25.1 Y`=24.3
ディスクレパンシー
上顎 -4.8 -3.8
下顎 -2.6 -3.8
アーチレングスディスクレパンシーは
上顎-8.6mm、下顎-6.4mm

治療方法
動的治療期間:6年2ヵ月
1期治療:3年4ヵ月
下顎 3DL(5)
上顎 HG、3Dセクショナルアーチ
2期治療:FBS 2年8ヵ月
抜歯部位 18・28・38・48番

初診時:8才3ヵ月
↓
1期治療終了時:11才10ヵ月
↓
動的治療終了時:14才6ヵ月

症例2

アングルIII級症例(非抜歯) 初診時年齢:11才11ヵ月 男性 over jet 4.7㎜ over bite 1.5㎜ 臼歯関係:右側 アングルIII級 左側 アングルIII級

小野の回帰方程式 近遠心幅径の総和
X'=24.2
3・4・5番幅径総和の予測値
Y=23.7 Y`=22.9
ディスクレパンシー
上顎 -2.9 -3.1
下顎 -2.2 -0.8
アーチレングスディスクレパンシーは
上顎-6.0mm、下顎-3.0mm

治療方法
動的治療期間:3年4ヵ月
1期治療:1年1ヵ月
下顎 3DL(5)
上顎 3DQ
2期治療:FBS 2年3ヵ月
抜歯部位 38・48番

初診時:11才11ヵ月
↓
1期治療終了時:13才0ヵ月
↓
動的治療終了時:15才3ヵ月

当会学術委員長(千葉市開業) 吉本彰宏

他本院では混合歯列期の段階で、小野の回帰方程式を用いて側方歯群の萌出スペースを予測し、必要な第1大臼歯の遠心移動量を算定、Wilsonの3Dリンガルアーチ、クワドヘリックスを用いて第1大臼歯の歯軸のコントロール、遠心移動、側方拡大などを行い、小臼歯抜歯をできる限り回避する抜歯を行っております。

本稿ではその症例について振り返りながら、その要諦についてお示ししたいと考えております。

症例分析と診断

診断にあたり、指標となるのはTweed分析のmandibular planeならびにL1 to madibularです。

前者についてはaverageに近ければ、易しい症例です。後者については、下顎前歯はsynphysisの中にあり、基本的に傾斜移動しかできないという背景を理解する必要があります。

synphysisの中で近遠心移動を試みると、歯根が皮質骨に当たって歯根吸収を起こしたり、歯根の露出を起こすリスクがあります。

よって、歯軸の傾斜が平均から離れており、かつsynphysisが細い携帯であった場合、歯軸の傾斜移動量はほとんどありません。下顎切歯歯軸のコントロールを要する症例では、歯軸の傾斜をどこまで平均値に近づけられるかを診断しなくてはなりません。

加えて、下顎6番の排列についても評価する必要があります。そのためにdiscrepancyの評価が必須になります。

discrepancyの評価-小野の回帰方程式-

discrepancyを評価する上で有用なのが小野の回帰方程式です。

これは下顎4前歯の幅径総和から、側方歯群の幅径の総和を予測するもので、初診時のavailable arch lengthから下顎前歯の叢生量と側方歯群の幅径総和の予測値を減じれば、下顎大臼歯近心隣接面までのdiscrepancy量が算出できます。

すると、大臼歯の近心移動を抑制すればよいのか、あるいは遠心移動を必要とする症例であるのかが判定できることになります。

Wilsonの3Dシステムを使用した矯正治療について

ディスクレパンシーがマイナスの症例について、下顎では第1大臼歯が近心傾斜ないしは舌側傾斜している、あるいはその両方がある症例が多く、この状態を放置すれば、さらなるスペースのロスが起こることが予測されます。

なぜなら、傾斜した歯軸は対顎との咬合によってその傾斜が加齢に伴って増大する転帰をたどるからです。

それに対しては、Wilsonにより考案された3Dリンガルアーチを応用すれば、問題の解決が可能です。

すなわち、第1大臼歯を近遠心的、ないしは頬舌的にアップライトして、傾斜の増大を抑止するわけです。第1大臼歯を整直すれば、さらなるスペースのロスの回避ができますし、第1大臼歯の整直を行う部位をコントロールできれば歯列弓幅径の増大が可能となるのです。具体的には、近心傾斜の解消は、近心根を中心として歯冠側を遠心側に回転させます。

また舌側傾斜の解消は頬側咬頭を中心として回転させます。これにより側方拡大と同様の効果が得られ、スペースが獲得されます。

歯列弓幅径の増大はdiscrepancy量を減らすことが可能です。加えてアーチの形態をovoid型にし、若干の犬歯間幅径の増大をはかることを併用すれば、さらに効果が望めます。

ただし、リンガルアーチのループのアクチベートについては慎重な応用が望まれます。リンガルアーチを構成するワイヤーは径が大きい(0.7mm)ため、アクチベートの効果が強く出ることがあるからです。

近年多く見られる下顎7番の近心傾斜している症例などでは、下顎6番の遠心移動量が多いと、第2大臼歯の埋伏ないしはposterior crowdingを誘発する可能性があります。よって、はじめはpassiveに適用されることをおすすめいたします。

上顎の第1大臼歯について

上顎の第1大臼歯では、図1に示すように近心舌側咬頭が口蓋側に向かう捻転を起こしている症例が見られます。

これに対しては、遠心舌側咬頭を中心として、3Dクワドヘリックスを用いて近心頬側咬頭を遠心に回転させれば、第1大臼歯の遠心移動ならびに上顎歯列弓の側方拡大と同等の効果を得ることができます。遠心移動量は2mm程度です。

よってAngle classII症例で必要な移動量が2mm以内であるならば、クワドヘリックスのみで問題が解消されます。一方、2mm以上の移動を要する場合には遠心移動が必要になります。

遠心移動の方法はいくつかありますが、いずれを選択するにせよ、遠心移動を伴う場合には、遠心移動を先行して、後に捻転を解消する方が賢明です。

また、多くの矯正専門医が行ってきたのと同様に、先に頬側にワイヤーを通してレベリングを先行して行うと、近心舌側咬頭を中心に捻転が解消されるので、結果的にスペースがロスします(図2)

治療の評価についてーGottliebの10項目-

症例の治療後、治療開始前の問題が解決されたか評価するのは大切なことです。評価にあたっては、Gottliebの10項目が有用です。JOSG会誌2001年vol.13に掲載されている概要をお示しします(スライド20)

下顎水平埋伏智歯の抜歯について

下顎6番のアップライト、遠心移動症例においては、7番の遠心移動も伴うことがあり、その場合に智歯が7番の遠心の歯冠にぶつかって埋伏することがよく見られます。

その場合、7,8の隣接面でカリエスが生じたり、7番の近心移動が誘発されたりといった問題がおこるため、本院では智歯は比較的早期に抜歯をしています。

智歯を早期抜歯するとき、しばしば智歯の歯冠は石灰化しているが歯根は未完成といった段階での抜歯になります。このとき、智歯は歯嚢の中に入った状態です。

歯嚢は肉芽様で、これを切開後に取り去ると歯冠が骨の中で動き回り、歯冠を分割して取り出すことが困難になります。

ですから、歯嚢は取り去らず、切開して歯冠が露出したらまず分割をし、取り出してから最後に歯嚢を取り除くという手順をとって下さい。

症例1

初診時年齢9歳3ヶ月、dental age IIIA, 21番の埋伏による11番の近心移動を認めるAngle classI症例です。

正貌は左右対称ですが、軽度の下口唇の肥厚を認めます。側貌は口元の突出感はなく、良好です。異常嚥下癖があります。

口腔内所見としては、over jet +2.7mm, over bite +3.1mm。12,42番の反対咬合、21番根尖相当部の歯肉の膨隆、下顎前歯部の叢生があります。側方歯群は乳歯が残存しています。

パントモより、上下顎第1大臼歯ならびに側方歯群永久歯胚の近心傾斜を認めます。

セファログラム分析から、convexityがほぼ+1S.D., A-B plane angleは-1S.D.を越えて小さく、Mandibular planeも-1S.D.で下顎に対して上顎がやや前方位、かつlow mandible の顔貌であることがわかりました。

小野の回帰方程式から、,下顎に-6mmのdiscrepancyを算出し、スライドに示すような診断となりました。

下顎には3Dリンガルアーチを適用して6番のアップライトと遠心移動をはかりました。その結果、大臼歯関係は一時的にII級となります。

その後、上顎には3Dクワドヘリックスを使用、前述のように6番の捻転を解消することによって大臼歯関係はI級になりました。クワドヘリックスを利用して近心移動した11番は遠心に移動し、21番のスペースを確保してから、21相当部を開窓、装置を装着して、エラスティックにより牽引し、歯列弓内にまで誘導してからDBSに上下顎の排列を行いました。

動的治療終了時、ならびに動的治療終了後2年の顔貌と口腔内写真を見ますと、安定した咬合が得られたことがわかります。

セファロトレースの重ね合わせと治療前後の分析も、良好な成長と側貌の改善が達成できたことを示しています。

前述のGottliebの10項目の評価では95.6%、goodの総合評価を得ています。

症例2

初診時年齢8際9ヶ月の男性です。Angle分類は右側I級左側II級、スライド21からわかるように犬歯の萌出スペースがありません。

医)彰美会 吉本歯科医院 咬合誘導 症例

他の矯正医・小児歯科医・大学病院等で「永久歯を便宜的の抜歯を行わないと歯列矯正出来ない」、また、「矯正治療途中で抜歯症例に移行を告げられた」と言われセカンドオピニオンで当医院を受診しに来て頂いています。

当医院では大切は永久歯をなるべく間引きしないで咬合誘導し一生自分の歯で咬める咬み合わせを築いています。非抜歯咬合誘導症例1000例以上治療を行っています。
(日本矯正歯科学会専門医取得)

症例 (1)

初診時年齢:11才1ヶ月

1期治療 2年2ヶ月
1期治療 2年2ヶ月

レントゲンで下顎臼歯が前方に傾斜し犬歯、小臼歯が萌出するスペースが不足し、下顎前歯の叢生を治しても通常なら4本の永久歯を間引きする抜歯症例となります。また、前歯の咬み合わせが深く(下の前歯が隠れている)下顎が後退し後に顎関節症にも移行する可能性が高い症例です。

1期治療 2年2ヶ月

矯正終了時 15才5ヶ月(2期治療 1年3ヶ月)
矯正終了時 15才5ヶ月(2期治療 1年3ヶ月)

下顎は3Dリンガルアーチ(人目には見えない内側の矯正装置)を用いて下顎大臼歯の前方への傾斜を修正し大臼歯を整直させることにより、犬歯、小臼歯が萌出するスペースを獲得します。下顎前歯の叢生も改善し、非抜歯症例へと咬合誘導を行います。上顎は3Dクワッドヘリックス(人目には見えない内側の矯正装置)を用いて上顎大臼歯の捻転の修正と犬歯間を拡大することで犬歯、小臼歯が萌出するスペースを獲得します。また、前歯の咬み合わせも浅く(下の前歯が見えてきています)下顎の後退も改善され顎関節症も改善されてきました。

矯正終了時 15才5ヶ月(2期治療 1年3ヶ月)

初診時年齢:9才3ヶ月
初診時年齢:9才3ヶ月

最終的にフルブラケットを各歯牙に装着し仕上げを行い矯正治療を終了します。通常なら4本の小臼歯を間引きする症例ですが当医院では非抜歯咬合誘導を行うことで下顎の臼歯部が整直し各歯牙の歯軸は平行性が保たれ、咬合力に強い症例と仕上げることが出来ました。歯槽膿漏・虫歯になりにくい咬み合わせで、この咬合を維持するようにメインテナンスを行う事で8020(80歳で20本の歯を残す)また、6024(60歳で24本歯を残す)が達成出来ます。また、顎の骨の中で歯牙の根先の移動が少ない為、歯根歯根吸収も最小限に抑えられます。また、前歯の咬み合わせも浅く顎関節症も改善されてきました。

症例 (2)

初診時年齢:9才3ヶ月

初診時年齢:9才3ヶ月

左上の前歯が埋伏し、上顎のスペース不足はー9mm。下顎の大臼歯は前方に傾斜し今後萌出してくる側方の歯牙のスペース不足はー7mm。通常なら上下顎左右の小臼歯を1本ずつ便宜抜歯する症例です。

1期治療 1年9ヶ月

1期治療 1年9ヶ月

上顎は3Dクワッドヘリックス(人目には見えない内側の矯正装置)を用いて上顎大臼歯の捻転の修正と犬歯間を拡大することで左上の埋伏歯の牽引(外科的に引き出す)スペースを獲得しました。下顎は3Dリンガルアーチ(人目には見えない内側の矯正装置)を用いて下顎大臼歯の前方への傾斜を修正し大臼歯を整直させることにより、犬歯、小臼歯が萌出するスペースを獲得します。下顎前歯の叢生も改善し、非抜歯症例へと咬合誘導を行います。

矯正終了時 14才8ヶ月

矯正終了時 14才8ヶ月

最終的にフルブラケットを各歯牙に装着し仕上げを行い矯正治療を終了します。牽引した左上の埋伏歯も正常並びレントゲンでもほぼ正常に機能出来るようになりました。通常なら4本の小臼歯を間引きする症例ですが当医院では非抜歯咬合誘導を行うことで下顎の臼歯部が整直し各歯牙の歯軸は平行性が保たれ、咬合力に強い症例と仕上げることが出来ました。歯槽膿漏・虫歯になりにくい咬み合わせで、この咬合を維持するようにメインテナンスを行う事で8020(80歳で20本の歯を残す)また、6024(60歳で24本歯を残す)が達成出来ます。

院長撮影

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