パッチテストとは背中や腕に金属をイオン化させた試料を貼り,48時間後に除去する。48時間後,72時間後,7日後に炎症症状を確認する検査である。時に,陽性や擬陽性検体については再検査を行う場合もある。
一般に準備されている金属は,銅,パラジウム,クロム,ニッケル,コバルト,水銀,スズ,カドミウム,金,白金,鉄,インジウム,イリジウム,モリブデン,銀,亜鉛,マンガンである。これらは全てイオン化した状態である。
また,感作イオンの診査目的以外に,最終修復・補綴材料の決定のためなどに歯科用金属の粉末でパッチテストを行うこともある。
岡山大学歯学部では、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(Noran Voyager M3100, Noran Instruments Inc.)を使用している。
原理は,高真空中で赤熱フィラメントから放出させた電子を高電圧で加速し,元素に衝突させる。加速電子で衝撃された元素では,内部の軌道から電子1個を失う現象が起こり,その結果失われた空の軌道に,外側の軌道(K軌道,L軌道,M軌道)にあった電子が落ち込んでそこを埋める。
その際余分なエネルギーを固有X線(Kα線,Kβ線,Lα線)として放出する。この固有X線の組み合わせで元素を識別する。
この際,電子顕微鏡にて数万倍に拡大した部位(約2μm)にでも実行可能であるので,大きな金属片を必要としない。
口腔内金属を分析する際,固定性補綴修復物は除去せず,かつ可撤性補綴物もその形態や機能を損なわないで行う必要がある。その手技は種々の方法が報告されている。
・マイクロサンプリングテクニック
ごく微量の削片を効率よく回収するためにシリコンチューブ(内径2.5mm)を利用してサンプリングする方法である。
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金属削片の採取は,対象となる金属表面を軽く研磨した後に,準備したシリコンチューブを対象となる金属の表面にピンセットを用いて軽く接触させ,その中心を通して注水を止めた状態のエアータービンで先端の切削能力の高いカーバイドバーを用いて,低速にてわずかに切削を行うことで金属削片を採取する。
シリコンチューブに付着した削片はエバンス刀等のインスツルメントを用いてシリコンチューブ内面からかき集めて回収する。その回収率は、金銀パラジウム合金で75.0±15.8%,ニッケルクロム合金で69.9±28.0%と良好な結果を示すという。
・研磨用ポイント(ホワイトポイント)を使用する方法
分析試料の採集に新品のホワイトポイントを用いる。ホワイトポイントを無注水下にて高速回転させ,目的金属に軽く触れると表面に金属が採取される。
分析にはごく少量存在すればよい。目安としては,はっきりと黒い点が付く程度で実行可能である。
ホワイトポイントに付着したままの状態で分析することが可能なので操作が比較的用意であり,かつX線分析装置は表層の金属しか分析できないのでホワイトポイントの影響は出にくい。
・小筆・綿棒を使用する方法
蒸留水を含ませた小筆・綿棒を近づけ,カーバイドバーをごく低速で回転させ,軽いタッチで微量の金属を削り取る。
小筆・綿棒に付着した金属片を注意深く取り除き,分析に用いる。パッチテストに用いることもできる。
金属アレルギー患者に見られる口腔内の炎症所見は,経過が長く発症部位や症状の変化も多様である。経過が長期に及ぶものなど,組織検査が必要と判断された際に行う。
炎症症状を他覚的に評価する資料として,また,炎症が何に起因するものであるかを検査するために行う。
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